人材開発マネジメント雑学 第97回

労務管理上の経営課題と労務監査の必要性(その25)

3.労務監査の必要性と実施方法

(2) 労務監査とは その2

企業を動かすには「ヒト、モノ、カネ」が必要とされていますが、労務監査はこのうち「ヒト」を中心に評価することとなります。即ち、労務監査とは「経営活動における経営資源のうち、ヒト(労働)の運用結果について」の監査と言えます。

経営の組織活動の実質は社員の職務遂行により行われているという観点から、目標を達成するための「人員配置、組織編成・運営に関わる人材マネジメントの有効性の評価」と「組織運営上の重要な労務管理制度・諸規定の整備状況及び職場を規制する労働法令への適応などの労務コンプライアンスの評価」の2つの柱が考えられます。

社会保険労務士総合研究機構では前者を「人材ポートフォリオ監査」、後者を「労務コンプライアンス監査」と定義しています。また、この2つを合わせて「経営労務監査」と定義付けしています。

一般的に監査とは「経営目標の効果的な達成のために、合法性と合理性の観点から経営活動を評価し、提言・勧告を行うこと」であると定義されています。

 

(3) 経営労務監査と労働条件審査との違い

近年、自治体のニーズから労働条件審査という言葉が使われるようになってきました。労働条件審査とは、経営労務監査のうち、労務コンプライアンス監査に特化し、必要に応じて、本来は人材ポートフォリオ監査の一部である従業員意識調査(本講では後にESサーベイとして記載)の手法を取り入れた監査であると言えます。

一般的に経営労務監査はどちらかというと経営者が自発的に、経営理念の実現や職場の生産性を向上させることを目的として、現状の労務管理のあり方を多角的に分析して改善に取り組むための指標を得るために行われるのに対し、労働条件審査の特徴は、経営者が外部から何らかの要請に応じるため、職場の労働条件について、その前提となる社会保険諸法令に基づく各種規定の整備状況、労働社会保険の適用、賃金管理等が適切に行われていることを担保するために行われることです。

内部からの要請か外部からの要請かの違いはあるにしても、どちらも自社の生産性を向上させることが目的であることは同じであること、また本来の経営労務監査では人材ポートフォリオ監査全体を扱うが、本講では、その一部のESサーベイのみを扱うことから、経営労務監査と労働条件審査の両方の意味で労務監査を使います。一般的に知られている言葉に、会計監査があります。会計監査は「経営活動における経営資源のうち、資本の運用結果について」の監査と言えます。