法人実効税率の引下げで税負担は軽くなるか?

 

―外形標準課税の拡大について―


皆さんは、「外形標準課税」という制度をご存知でしょうか。

外形標準課税は、資本金1億円超の法人を対象として、

平成16年4月1日から法人事業税を計算する際に導入されている制度です。

資本金1億円超という条件があるので、ほとんどの中小企業では関係のなかった制度ですが、

昨今、この外形標準課税の対象を広げようという議論が政府内で起こっています。

 

安倍政権では、法人税の実効税率を引下げる議論が進んでいます。

これは、日本の法人税率が諸外国と比べて高く、税率が高いことが

企業の国際競争力を弱めている、あるいは、外資の日本進出の阻害要因になっている

と考えられているからです。

では、法人実効税率を下げるとどうなるでしょうか・・・。

 

現行の法人実効税率は35.64%(近隣のアジア諸国は約25%)ですので、

実効税率を1%下げた場合、全体で4,700億円の税収減となります。

この減収となる部分の穴埋めをどこでするのかが大きな課題となります。

そこで、浮上してきたのが課税ベースの拡大=外形標準課税の強化というわけです。

外形標準課税は、法人の所得(利益のこと)をもとに計算されるわけではなく、

資本金や賃金、利息等の金額を基準として計算されるため、

単年度の利益がマイナスの法人であっても税金を納めなくてはならなくなります。

 

日本で法人税を納めている企業は全体の約3割といわれています。

外形標準課税を導入すると、今まで一部の企業に偏っていた税負担を

「広く浅く」負担することにつながり、公平性の面から支持されています。


一方で、中小企業には負担増となるため、日本商工会議所等から反発の声が上がっています。

また、外形標準課税を強化すると、企業の賃上げの動きを阻害することも考えられ、

アベノミクスの政策と矛盾すると指摘されています。

政府税制調査会でも、賛否両論でています。

今後、法人税の減税と税収の確保の折り合いをどこでつけるのかが

最大の焦点といえるでしょう。

 

 

☆外形標準課税のイメージ

~外形標準課税のうち、「付加価値割」部分を計算してみます。~

 

A社の当事業年度の業績

(単位:千円)

〈付加価値割の原則的な計算方法〉

売上高

50,000

付加価値額=①+②+③±④

売上原価

25,000

売上総利益

25,000

給料

15,000

付加価値額

17,000

賃借料

7,200

税率

0.504%

(平成26年京都府の税率)

支払利息

300

付加価値割

86

その他諸費用

8,000

(別途例外規定あり。上記試算では考慮していない)

費用合計

30,500

当期利益

△5,500

 

 

 

 

付加価値割は、

企業の①報酬、②賃借料(地代家賃等)、③支払利息、④当期損益の4つをもとに

計算される外形標準課税の1つです。

A社を見てみますと、当期は大幅な赤字にもかかわらず、付加価値割を計算するもとになる

付加価値額は17,000千円ありますので、それに税率をかけますと、

年間で86千円の付加価値割を払うことになります。

赤字の中小企業では、均等割以外に払う税額が増加することとなります。

(なお、上記のシミュレーションはあくまで原則計算で行っており、報酬の金額の大小等で若干計算方法が変わる場合があります。)